日誌

はじまりの美


  アルプスの少女ハイジという有名なアニメがあります。

 ハイジがある時おじいさんに「夕焼けはなぜこんなに美しいの?」と尋ねます。おじいさんは、「夕焼けは、お日様が山にお別れをする言葉だからさ。この世で一番美しいのは、お別れの時なんだよ」と有終の美の話をするのです。

 この話を思い出したのは、水泳部の子どもたちの練習を見ていた時です。7月のはじめ、「今年度水泳部を先行廃止し、来年度、陸上、球技、駅伝のすべての運動部を廃止する」という市教委の方針に、子どもたちの姿が、沈みゆく太陽のように思えたのかもしれません。

 実際に、目の前の子どもたちはというと、水をかき、水をけり、懸命に泳いでいます。その動きに触発され、まわりの子たちからは、自然と「がんばれ」「いいぞ」と水しぶきといっしょに声があがります。そして、ついにゴール。水面から現れた真黒な顔、そして疲れ切った表情の中にある瞳の輝き。なんとも言えぬ強さを放っていました。ああ、「有終の美」なのかなあと思えてしまいました。

 8月3日の最後の大会は、本当によく頑張りました。


 さて、その一方、グランドや体育館の球技部も動き出しています。「おはようございます」と、今日も元気な声をかけてくれました。上手な子も、そうでない子もいます。技術はどうであれ、やる気に満ちた姿は、美しく、未来を感じさせます。部活動は廃止の道をたどりますが、彼らにとってのスポーツ人生は始まったばかりです。夕日ではありません、朝日のような「はじまりの美」なのです。