日誌

2019年12月の記事一覧

パプリカ合唱隊


  保護者の皆さんから、「挨拶が進んでできない」というアンケート結果をいただきました。そうした声を受けてか、3年生、5年生では、総合の授業や学級会で、挨拶について話し合い時間をもってくれました。教室ではやる気満々の子どもたちです。さあ、学校の外では……

 その週の寒い朝のことです。太田スポーツから上ってくる坂道より、何やら声が聞こえてきます。耳を澄まして聞いてみると、どこかで聞き覚えのある歌です。それも一人の声ではなく、何人かの歌声です。その朝は、冷え込みが厳しく、立っているだけで寒さがぞくぞくと身に染みてきます。私は凍えながら、彼らがこちらに来るのを待つことにしました。坂道を上ってくる彼らは、明るく笑顔でこちらに近づいてきます。寒さなど微塵も感じていないようです。

坂道を上りきると、その歌声はさらに大きく聞こえました。さあ、いよいよ曲のサビの部分に入ろうとしたとき、私の姿を認めた子どもたちは、急に歌うのをやめ、大きな声で叫びました。

「おはようございます」

「ああ、おはようございます」と私は挨拶を返し、「何という曲?」と聞くと、子どもたちは一斉に笑顔で「パプリカ」と答えてくれました。

その後、子どもたちは、角を曲がり、西門に向かいました。そして、しばらくすると、再びパプリカが始まりました。私は、後ろ姿を眺めながら、彼らを「パプリカ合唱隊」と勝手に名づけました。寒い朝でしたが、合唱隊の元気な歌声と挨拶に、何とも気持ちのよい朝となりました。 

  冬場の登校は、冷たく気が重いもの、おそらくパプリカ合唱隊の中にも、そういう子はいたに違いありません。しかし、歌声と仲間の力で、元気な朝を迎えることができたのです。見ると合唱隊は、今はもう学校に到着するところでした。 

マラソンの宝物


 今年度本校に赴任した川島先生は、マラソンが趣味だそうです。日本各地のマラソン大会に参加している、42.195㎞を走るまさしくレジェンドです。「あんなにつらい競技、なぜ走り続けるの?」と私が聞くと、「走るのが楽しいから」と答えがあっさりと返ってきました。どんなことに対してもやはり「好きである」ことが向上の第一歩であると、改めてわかります。

  さて、今年の校内持久走大会は、風もない小春日和の11日に実施できました。昨年は、インフルエンザ流行により学級閉鎖もありで、年越しをして実施した学年もあったことを思えば、今年は最高のコンディションであったと言えます。

 とはいえ、川島先生のように「楽しく走る」境地には、子どもたちはまだほど遠いらしく、顔をしかめ苦痛にあえぐ顔や、涙を浮かべて悲嘆にくれる顔と、私の前を走りゆく顔は、どう見ても楽しそうではありません。楽しい境地は、もう少し時間がかかりそうです。

 今年のマラソンも、順位や記録といった結果だけでなく、悲喜こもごものドラマがありました。

   休日も学校に来て練習を続けた子、友達についていこうと懸命に友の背中を追った子、ライバルに敗れ、悔し涙を流した子、疲れて倒れたが先生の言葉に復活し再び走り始めた子、去年は伴奏者がいたが今年は自力で走った子、そして、友達のために声を枯らして応援した子など、そこには、順位、記録という器からはこぼれ落ちても、さんさんと輝いているものがあります。その放っておけばうずもれてしまう宝物を拾って、本人に「がんばったね」と言葉で返してあげるのが大人の仕事です。

 保護者の皆さん、ご来校ありがとうございました。わたしたち教職員が、拾いきれなかった我が子の輝きを、ぜひご家庭で届けてあげてください。

舞い散るイチョウの葉を見つめて

 

   陽光に照らされながら、黄金色に染まったイチョウの葉が、はらはらと舞っています。その中を子どもたちは走りぬけていきます。

かけ足訓練が始まりました。イチョウの樹は、眼下にこうした子どもたちの頑張る姿を眺めて毎年葉を落としているのでしょうか。樹の根元では、今日も用務員さんが朝から竹ぼうきや熊手で落ち葉をかき集め、軽トラックにのせています。ご苦労様です。

   落ち葉舞う光景を見ていたら、先日行われた特別支援学級の「クリスマスの集い」を思い出しました。総合体育館で行われたこの会のクライマックスは、体育館の天井から舞い落ちる紙吹雪です。その紙吹雪の風景が、落ち葉舞い散る本校のそれと重なったのです。会場が暗くなり、雪のような紙吹雪がひらひらと落ちてきます。市内の特別支援学級の子どもたちは、両手を広げながら歓声をあげています。そして、会場が明るくなると、フロア一帯は 紙吹雪の雪景色が広がっています。

   アナウンスとともに雪合戦が始まりました。よく見ると、一片一片の紙きれは、形がさまざまです。四角もあれば三角もあり、いびつな形もあります。その形の一片一片に、子どもたちが雑紙を細かく切り準備した姿が浮かび上がります。これだけ膨大な量ですので、たくさんの時間を要したに違いありません。放課も使いながら、子どもと先生が車座になって会話を楽しみながら切り続ける光景が見えるようです。紙吹雪が美しく見えるのは、楽しかった先生とのふれあいの思い出もあるからではないでしょうか。

 会場にはたくさんサンタクロースが集まりました。が、先日は、本校にもたくさんの方が訪れ、すてきなプレゼントをいただきました。「むかしあそびの会」です。校区のご老人が、めんこ、コマ、お手玉、けん玉、あやとりなどと、さまざまな遊びを教えてくれました。会場は、「クリスマスの集い」と同じように、1年生の歓声がいつまでも響いていました。