日誌

2019年9月の記事一覧

メッセージ

 頑張って今も咲いている1年生のアサガオの花。その鉢植えの前にある畑に、そのアサガオをまねるかのように、謎のうす紫の花が咲きました。何だろうと、1年生の子に尋ねてみますと、「サツマイモ」と返ってきました。

 サツマイモの花、ううん、見たことない。

 生活科の先生に調べてもらうと、サツマイモの花は、沖縄以外では咲かないそうです。……ただ干ばつがひどかったり、猛暑であったりすると、まれに花が咲くことがあると教えてくれました。ああ、そういえば今年の夏の暑さもかなりのものでした。健気に咲くその姿は、夏の酷暑に耐えぬいたという力強いメッセージなのかもしれません。

 さて、福岡ウォークが近づいてきました。

 元気いっぱいの2年生は、練習も兼ねて、校区探検に出発しました。

 潮音寺では、塩満保育園の園長先生にその歴史を聞きました。

 今から約75年前、豊橋空襲でほとんどが消失された中で、唯一火災を免れたのが、山門。その中には、恐ろしい形相で立ち尽くす一対の仁王像があります。その仁王像ににらまれてか、子どもたちもいつになくおとなしく座っていました。像の前に吊るしてあるわらじは、裸足の仁王様を気遣って、地域の方が編んで吊るしてくれたと話がありました。

 人々の思いを受け止め、阿吽の呼吸で、地域を守り続けてきた仁王像。彼らも、戦争当時戦火で燃える市街を目の当たりにして、その表情どおり怒りに満ちていたことでしょう。そう考えると、焼け残った仁王像は、私たちに戦争の悲惨さを伝えるひとつのメッセージのようにも思えてきます。

 いよいよ3日は、福岡ウォーク。福岡校区の街並みに残る風景には、さまざまなメッセージが隠れています。2年生、4年生の皆さん、歩いて、ふれて、考えて、福岡校区の声を聞いてみて下さい。



 

 

 

白いテープ


 わんぱくタイムになりました。ふれあいルームは、トーチ棒を手にした子どもたちがなだれこんできました。間近に迫った野外活動のファイヤーのトーチトワリングの練習です。それぞれが、思い思いにトーチ棒を指に挟んで回し始めています。そこに瀬野尾先生が現れると、一気に頑張ろうという緊張感が高まります。さすが瀬野尾先生、彼の卓越した指導力に感銘を覚えます。ただ昨年度から雨男として一世を風靡した人ですので、当日の天候については一抹の不安がよぎります。映画で話題になった「天気の子」を呼んできたいものです。

 練習が始まりました。すると程なく練習の輪から抜けて、部屋の片隅で手に巻いてあったテープを巻き直している子がいます。ああ家庭や学校で練習を繰り返し、おそらく指の関節や指と指の間が棒で擦れて負傷しているのでしょう。痛いだろうなという心配をよそに、本人は痛がる様子を微塵も見せず急いで練習の輪に戻りました。そんなことを思って子どもたち全体を見渡すと、多くの子の真黒に日焼けした手元に、白いテープがまぶしく見えます。本物の炎を扱う恐怖や緊張を前に、本気になって取り組む子どもたち、その勲章のように白いテープは輝いています。

 時を同じくして、家庭科室では、カレーの調理実習が進んでいました。額に汗して、ジャガイモ皮むき、具材の煮込みに真剣に取り組む姿を見ていると、ここでも5年生の野外教育活動に寄せる思いの強さがひしひしと伝わってきます。カレー作りも万全なようです。

「あなたは、来年職がなくなるかもしれないから、料理でも勉強したら…」家庭で言われました。食欲の秋、料理などあまりしたことがない私の手も、白いテープに覆われているかもしれません。

スタートライン

 
 職員すら知らされなかった、8月17日清川康輔先生 結婚式の極秘情報は、どこから、どう伝わったのでしょうか。

 当日式場には、3年生、6年生、卒業生等と、彼が担任として関わった子どもたちが登場し、式に花を添えてくれました。子どもたちの笑顔や祝福の言葉に囲まれて、なんと二人は幸せそうな表情なのでしょう。彼の言葉を借りれば、こうして新しい人生のスタートラインに立ったことで、いかに周りの人たちに支えられて生きてこられたかがわかったそうです。

 結婚に限らず、人生においても、人は何度もスタートラインに立ちます。そしてそこで立ち止まることで、今までの人生を顧みたり、これからを展望してみたりと、視野が開けて新たな一歩が踏み出せるのです。

 さて、そのスタートラインと言えば、8月末、長年の願いが叶い、小池神社横に信号が設置されスタートしました。これまでここは、朝夕の車の通行量が多く、しかも若干カーブする道で見通しがよくなく、さらに加速して走る車も多く、校区で一番の危険箇所で、子どもたちの通学に危険が伴っていました。しかし、こうして、安心して横断歩道を渡る子どもたちの姿を見ていると、校区の自治会長さん、議員さんをはじめ、校区の皆様のご尽力、ご協力に対して感謝の言葉も尽きません。さっそうと立っている信号は、さながら清川先生と同じで、その陰に、多くの人たちの存在を感じます。信号機のついた横断歩道は短いですが、その数メートルに10年以上の人々の苦労が詰まっているのです。

 夏休みが終わりました。職員の吉報、校区の朗報に包まれて、また子どもたちの学校生活がはじまります。子どもたちは、スタートラインに立ち、夏休みをふりかえりつつ、新たな一歩を踏み出そうとしています。  
  









はじまりの美


  アルプスの少女ハイジという有名なアニメがあります。

 ハイジがある時おじいさんに「夕焼けはなぜこんなに美しいの?」と尋ねます。おじいさんは、「夕焼けは、お日様が山にお別れをする言葉だからさ。この世で一番美しいのは、お別れの時なんだよ」と有終の美の話をするのです。

 この話を思い出したのは、水泳部の子どもたちの練習を見ていた時です。7月のはじめ、「今年度水泳部を先行廃止し、来年度、陸上、球技、駅伝のすべての運動部を廃止する」という市教委の方針に、子どもたちの姿が、沈みゆく太陽のように思えたのかもしれません。

 実際に、目の前の子どもたちはというと、水をかき、水をけり、懸命に泳いでいます。その動きに触発され、まわりの子たちからは、自然と「がんばれ」「いいぞ」と水しぶきといっしょに声があがります。そして、ついにゴール。水面から現れた真黒な顔、そして疲れ切った表情の中にある瞳の輝き。なんとも言えぬ強さを放っていました。ああ、「有終の美」なのかなあと思えてしまいました。

 8月3日の最後の大会は、本当によく頑張りました。


 さて、その一方、グランドや体育館の球技部も動き出しています。「おはようございます」と、今日も元気な声をかけてくれました。上手な子も、そうでない子もいます。技術はどうであれ、やる気に満ちた姿は、美しく、未来を感じさせます。部活動は廃止の道をたどりますが、彼らにとってのスポーツ人生は始まったばかりです。夕日ではありません、朝日のような「はじまりの美」なのです。